日本の魚介

イセエビ

 イセエビは、房総半島から長崎までの太平洋岸に産し、日本海には姿を見せない。イセエビの名は、伊勢湾で多くとれたところから名づけられたもので、むかし江戸の人は鎌倉エビとも呼んでいた。

 高級レストランでは、和洋食に限らず、高級の食材として扱われる。
 他のエビにくらべて甲殻が硬く、その姿が具足をつけた武士のように立派なので、縁起ものとして用いられ、その名も同じお伊勢様(大神宮) の信仰から、正月の飾りとして、なくてはならぬものに考えられた時代もある。
 イセエビの特徴はなんといっても、あの長いヒゲで、もう一つの短いヒゲに対して、第二触角という名称があり、ぐっと背の方にそりかえって、体長よりはるかに長く立派だが、柄にもなく悲しそうにギイギイと鳴くのは、このヒゲの関節である。

 体を頭胸部と腹部(腰の曲るところ) に分けて、頭胸部には五対の歩脚があり、腹部には四対の泳ぐ脚 (ヒレ) がある。泳ぐ脚が大きいのは雌で、小さいのは雄である。また、クルマエビなどは、第一脚から三脚までにハサミをもっているが、イセエビは雌に限って、歩脚の第五対 (一番あとの脚) に退化したハサミが残っている。
近ごろでは乱獲がたたって、イセエビの漁は振わなくなった。普通は秋から春までが漁期で、夏の産卵期には禁漁となる。一腹の卵は一万五千から二万個近く産むといわれるが、これが親になるまでには三年もかかるのである。
イセエビは昼のあいだ、岩のすき間などにかくれていて、暗くなるとエサをあさりに活躍する。漁師は夜を待って、日の大きい刺アミを港の入口などに沈め、未明のころに引き上げると、ヒゲや脚がからみついて、完全にとらわれの身となっている。

イセエビの料理にはかならず活けを使うべきであるが、このごろは冷凍ものも出まわっている。あがった (死んだ)ものは自家消化(くさり)が早いので、特に注意が肝要である。
 浜からとったばかりのイセエビを、活き作りにして、ポンスしょうゆで食べる味は、また格別である。頭と腹部を引きはなして肉を取り出し、腹部の殻を裏返して頭部にはめ込み、これに肉を盛るのである。客膳に出してもヒゲが動いているので活き作りといい、船形に作るので船盛りともいう。頭部のミソは、味噌汁に入れると風味があり、塩辛にしてもうまい。
具足煮とは腹面から二つ割りにして、ソバ汁で煮たものをいい、鬼ガラ焼はやはりタテ二つ割りにして、焼いたものである。洋風にもボイル、フライ、クリーム煮など数々の料理法がある。
 同属に大形のニシキュビ、カノコイセエビ、シマイセエビ、色の美しいゴシキュビ、胴が四角のハコエビ(ドロエビ)、胴が平らなウチワエビなどがあるが、ハコエビのヒゲは後ろへは曲らない。
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