日本の魚介

アマダイ

アマダイは頭部が大きく、おでこから口までが絶壁のようになっている。全体の姿はタイに似ているが、ご面相はあまりよいとはいえない。その体色によって、アカアマ、シラカワ、キアマなどと区分され、アカアマとキアマは混同される場合が多い。

 味の点ではシラカワが一番おいしく、アカアマがそれに次ぐといわれているが、東京ではやはり近海でとれる、イキのいいアカアマの方が歓迎され値段も高い。西から来るシラカワの箱詰は、鮮度の落ちたものが多く、その実味に摸する機会が少ない。

 アマダイは京都でグジ、大阪ではクズナと呼ばれ、旬は十一月から三月ごろまで、夏はほとんど姿をみせない。したがって寒い季節の魚ということになる。

 料理魚としては高級の部に属するが、肉がやわらかいので、刺身には作らない。関西では昆布締めにするようだが、生食の味はマダイにくらべるとはなはだしく劣る。ところが、焼物や蒸し物にすると、マダイとは別の風味が生じ、なかなか品位の高い料理ができる。

 焼物では幽庵焼、照焼、西京漬 (白味噌につけたもの) 粕漬など、いずれもおいしい。一風変ったのに 「木の花焼」 というのがある。魚を焼く場合は鱗をとるのが普通だが、これはアカアマの美しい鱗を鑑賞するために、わざわざ鱗をつけたまま焼くのである。皮目の方から火にあぶると、鱗の一枚一枚が総立ちになって、ちょうど桜の花びらが吹きよせられたようなながめになる。塩味だけではものたりないので、ポンス醤油を添えるとよい。

 松茸、銀杏などと盛り合わせて作る焙烙焼や焙烙蒸しにも、クルマエビなどと共に用いられる。焙烙焼と熔烙蒸しを混同する人があるが、焙烙焼は蓋の上にも火をのせて焼きあげるものであり、焙格蒸しは材料を酒塩で洗い、その汁の蒸気によって蒸し煮するものである。仕上げに松葉をふりかけた景色は、なかなか風情のあるものだ。
あまだい
 これから寒さに向っては、アマダイのそば蒸しがいい。アマダイの切身に軽く塩をあて、鉢に入れて火の通るまで蒸し、一度蒸し器から取り出して水気を切る。これにそばを形よく盛り、そば汁をかけてもう一度蒸す。そばの上に、もみ海苔と薬味の葱をちらし、すぐ蓋をして熱いうちに食べる。

 マダイは頭を割ってカブト焼やチリ鍋にするが、アマダイの頭はあまり役にたたない。駿河湾では大漁のとき、アマダイを干魚に作って、各地へ出荷したものである。それが興津鯛の名を高からしめ、いまでは伊豆一円で、アマダイのことをオキツと呼んでいる。

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